A Ghost Story

  • 2018.11.23 Friday
  • 23:14


シーツを被っただけのゴーストというビジュアルや良い意味で眠そうな予告編に惹かれて鑑賞。
ゴーストって言ってるけどホラーではないよ!
冗長とも言えそうな長回しの演出等々は思ってた通りのもので楽しめたのだけど、ストーリーに関して、あらすじから死してなお恋人を見守る幽霊の切ない愛の話…みたいなものだと思っていたらすんなりと予測していない方向へ進んで行き…。

展開は彷彿とさせる、ある特定の映画が一つあって、そういう意味では近い感動を覚えるのだけど本作には語らないメッセージや感じ方を委ねる作りとともに、そのスケールの狭さ(小さくはない)に魅力があると思う。
場面は変わっても場所は変わらない、ずっと"そこ"に在り続ける事へ覚える切なさや愛おしさや息苦しさ。
主人公はゴーストではあるけど、その視点を通して生きている事への眼差しを共に感じるような作りなので、そのスケールの狭さによって、自分の身近な物へ重ねて見る、感情移入もとてもし易くなっていると思う。
セリフも少なく静かで、重ねて言うけど定点長回しも多い演出なので退屈に感じる人もいるだろうし合わない人にはとことん合わないだろうなとは思う。オサレ演出とかそういう揶揄もされそう。でもそういう回りくどいような演出が結構好物なので。

しっとりとふわっとした顛末も好きで、その上でゴーストがとても可愛らしくて。悲しんでる恋人を眼の前にしながらも何も出来ないからただ立ち尽くしている画とか、ある目的で柱を手でコリコリし続ける様とかとってもキュートで切ないんですよ。
ケイシー・アフレックはきっちりシーツ被って無言の演技をしていたそうですが、表情があるように見える部分もあり、単純に長回しのシーンはそれはそれで撮影大変だよなこれ、って思う部分もあったり。(序盤に関してはルーニー・マーラの方がこれスゴイなと思ったけど)

視聴者側が頭を巡らす部分の多くて哲学的で、万人受けはしないかもしれないけど私はだいぶ好きになってしまいました。
サントラも印象に残ったのを何曲かダウンロードするつもりが気づいたら一枚丸々買ってました。
もう一回みたいな〜。
具体的な内容に触れる部分は以降より。
ちょっと内容うろ覚えかも。





ネタバレ---------------------------------------------------------------------------




・喪失と見守り
軒先への運び出し、ベッドで寄り添う夫婦、と長い長い長回しの後、あっさりと夫は交通事故で命を落とす。
再びの長回しの末にするりとシーツが立ち上がる。寂寥感溢れる家路をたどって帰宅したら今度はチョコタルト?を泣きながら貪るルーニー・マーラを眺め続けるカット。
この貪りカットがかなり冗長に感じた。体感にして5分くらいだったか?撮影絶対大変だよなこれ、ゴーストも微動だにせずに突っ立ってるし…と思ってると最後にはトイレに向かって嘔吐。
何れの長回しも映画として見ているからにはいつまで続くんだこれ…と思ってしまうけど実際の時間としてはいつまでも続くと思える風景であり、映画として見ている側からは決して触れる事のできない時間であって。
貪りカットに関しては、行き場のない深い喪失感と悲壮感と、死という非日常から地続きの現実としてこれ以上ない表現になっていて、ただ眺める事しか出来ないのはゴーストも視聴者も同様で、早回しすら叶わないというのは劇場ならではな感覚だったかなと今にして思える。
物音によって突然遮られる就寝風景も、死という展開の示唆とも捉えられるし、もっと言えばこの物音自体故意的に引き起こされた音であって。そこまでにゴースト自身の葛藤や苛立ちも含まれていると考えてくと二重にも三重にも理由付けがしたくなるシーンになってたと思う。

・遺産
夫が生前作っていた音楽を聴きながらの回想シーンは文字通り彼の遺産を描いている。
それを持ってメモをしたためたというのが本作のポイント、なのだと思う。
この曲がエレクトロニカっぽくデジタルでハイトーンボイスがエモくて結構名曲だと思いました。
っていうかサントラ全編に渡って浮遊感と沈殿の繰り返しの感じがとても心地よくてかなり好きです。

・住人
てっきり夫婦の物語だと思っていたので、新しい人生を歩み始めたとはいえヒロインが家を出て行って、主人公の方はそのまま家に残って…という展開になったのがかなり意外で、呆気にとられていると隣家のゴーストや新しい住民の登場等、想像していなかった展開がどんどん流れ込んできてこの辺から一気に物語に引き込まれていった。
いわゆる地縛霊になってしまい、超常現象まで引き起こしちゃってすっかりいわゆる幽霊になっちゃったゴースト。
新しい人生を始めてしまった彼女への思いは未練と共に、もはや自分の存在はなかったことになってしまったんじゃないかという喪失感と、そう確信しきることも出来ず諦めきれずにいる切なさ。幸せそうな家族の風景はそれまでの自分たちの風景を完全に塗り潰されるような気がして拒否反応を起こしてしまったんじゃないだろうか、と思ってたりします。
わざわざヒスパニック系の家族を出して異国語を使わせ、字幕も一切出さないという情報の絞りっぷりや遮断の仕方が面白い。
シングルマザーなところといいちょっとお金に困ってそうな気がするのもなんか示唆的な気がする。
隣家のゴーストとの会話シーンは劇中でもとりわけシュールでカワイイ。主人公と違って花柄?のシーツだったように見えたけど、或いはゴーストになった時に被っていたもので変わったりするのだろうか。
無表情だけど場面毎に表情や感情が見える気がしてくる。

と、ここで急におじさんが語る語る。おもむろであからさまな説明シーンになってる気がしないでもない。
とはいえ、人生と共に夫婦の関係という一つの宇宙の終わりを体感したゴーストにとっては単なる机上の妄想でもなくて聞き込んでるように見える。というか、生者が死人である幽霊に対して宇宙の終わりを語っている、という構図自体がかなりシュールで皮肉な画になってて面白い。
その後突然に家は取り壊される。隣家のゴーストが「もう戻ってこないみたい」と諦めたと同時に消失するカットがとてもハッとする。それが成仏する条件なのか。諦めてしまった、のかそれとも、ようやく諦められた、と捉えるべきか。
なんにせよシーツがサッと地面に落ちる画がシュールなのにとても悲しい、もう死んでいるのに、今一度死んでしまったかのような、それこそ喪失感を覚えてしまって。
家がなくなっても諦めないのは最早"待っている"とは言えない。むしろ"探している"のか。

・ヒストリー
住宅地にこんな高層ビル建つのかよ、と思ったがそこまでの膨大な時間が過ぎた、とも捉えられる。最早そこで営まれる人間の生活にも興味を示さない様子やすっかり汚れたシーツはそれを感じさせるには十分。荒んだようにも見える。意を決しての飛び降りはまさに絶望しての自殺。それでも幽霊の彷徨は終わらない。
とか考えていたら今度は西部開拓時代っぽい風景。そこで目にする或る家族の顛末。主人公は生前、この地の歴史が好きだと言っていたけど、この歴史も含んでの話なんだろうか。
矢が刺さって血を流している一家の姿は結構ショッキング。家を持たぬ"家"族は何も残せなかったのかというと、そうでもなくて。主人公が探し求めているものと重なる、黄色い用紙のメモ。あの子はヒロインと遠い血縁があるんじゃないかとか、色々想像を掻き立てるけど、ここにおいては"メモ"という一致が重要な要素かな?
と、この一連の時間旅行、ゴーストにとっては西部開拓時代も妻も子どもたちもパーティも解体も高層ビルも、目撃してきた歴史に過ぎないものになっていて、膨大な時間を過ごしながらもその場、"家"を離れないという莫大でありながら狭いスケール感が静かに圧倒的。もしかしたら2周目どころじゃないのかも。ゴーストの孤独感に対しての切なさと共に、地縛霊と呼ばれる存在はもしかしてこんな気持ちなのか、なんて思いの馳せ方をしてしまったり。かといって逆恨みで食器を片っ端から投げられるのは嫌だなァ。

・成仏!
身も蓋もないけど構成はインターステラーの終盤に近いです。影響受けたのかな?
とはいえこういう時空超越ループもの自体はありふれてるので他にも該当する作品ありそう。もしかするときっとこの映画も影響を与えていくのではないでしょうか。インターステラー自体もそうだろうし。
緩やかに、しかし確かに伏線も貼ってあり、その辺は同様の気持ち良さを備えてる。
早くなる鼓動を示すかのように音楽もアップテンポになり、遂にメモを手にとり開いたゴーストは、
内容はなんでもいい、とにかく彼が生きた証が、彼女の残した証が、そこに在れば。長い長い旅路の末に救われた(であろう)結末はあっさりとしながらも希望的でとっっっっても良い余韻を残す見事なラストカットでした。


……眠くなかったといえば嘘になるけどとても良い映画体験でございました。
哲学的でアートな実験作品的な映画ではあるけど、その実誰にも寄り添う普遍的で身近な不安や焦燥を優しく諭してくれる物語に仕上がっていると思います。
死んでないのにフラフラしてる私なんかもどこかで彼に申し訳なくなっちゃうような。そんな事考えてたら食器投げられそうだけども。
多分複数回見ても都度新しい発見ができそうな映画なので、また観たいなぁ。

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  • 2020.06.11 Thursday
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